「CBDで鬱になる」は本当?科学的根拠や臨床実験から考察

「CBDで鬱になる」というフレーズは耳にすることがあったかもしれませんが、それが真実なのでしょうか?

一体何が科学的根拠なのでしょうか?また、実際の臨床実験からはどんな結果が出ているのでしょうか?

この問いに対する答えを得るためには、科学的な証拠と臨床試験の結果を探る必要があります。そして、その情報に基づいて、CBDの可能性と鬱病との関係性についての理解を深めていきます。

この記事を読んでいくことで、CBDについての知識を深め、自身の健康に対する最善の行動を考え直してみましょう。

目次

CBDとは何か?

CBDの概要と成分

CBDは、カンナビジオールの略で、麻(ヘンプ)から抽出される一種の天然成分です。この成分は、麻に含まれる多数のカンナビノイドの一つで、具体的には113種類のカンナビノイドの中で最も注目を浴びているものです。

しかし、よく誤解されがちなのが、CBDが「ハイ」な状態を引き起こす成分であるという考え方です。マリファナを代表とする、この心地よい興奮状態を作り出す薬物は、THCと呼ばれる別のカンナビノイドで、CBD自体にはこのような作用はありません。

CBDは全身のエンドカンナビノイドシステム(ECS)に働きかけることで、ストレスや不安、炎症、痛みなどの様々な症状の緩和に役立つとされています。エンドカンナビノイドシステムは、我々の体のホメオスタシス(内部環境の安定)を維持するための重要な生理システムで、CBDはこのシステムと直接相互作用します。

CBDの法的地位

CBD(カンナビジオール)の法的地位は、その成分が麻から抽出されるという性質上、国や地域によって大きく異なります。

日本では麻薬及び向精神薬取締法により、麻の無許可での栽培や所持が禁止されていますが、CBD自体は規制の対象とならず、合法的に販売・使用されています。しかし、THCを含むCBD製品は違法となるため、製品を選ぶ際はその成分表示に十分注意が必要です。

海外では、ある地域では、THC(テトラヒドロカンナビノール)含有量が0.3%以下の麻から抽出されたCBDは合法とされています。一方、一部の国や地域では、麻自体が法的に規制されているため、その一部であるCBDもまた法的制限の対象となる場合があります。CBDとTHCのそれぞれの捉え方において、地域による差があります。

ひとまず我々の日本では、THCは違法ですが、CBDは合法です。したがって、CBD自体が違法な薬物という認識はよくある勘違いとなります。

CBDの利用方法と形状

CBD(カンナビジオール)はその形状や利用方法が多岐に渡り、個々の生活スタイルやニーズに合わせて使用することができます。

CBD製品は一般的にオイル、カプセル、エディブル(食べられる製品)、トピカル(肌に塗る製品)、ベポライザー(蒸気を吸引する製品)などの形で提供されています。オイルやカプセルは内服することで全身に効果を発揮します。エディブルは食品や飲料と一緒に摂取でき、より身近な形でCBDを利用できます。トピカルは特定の部位に直接適用できるため、痛みや炎症の局所的な緩和に役立ちます。ベポライザーはCBDをすばやく吸収でき、即効性を求める方に適しています。

具体例として、不安を感じた時や寝る前にリラックスしたい時には、CBDオイルを数滴舌の下に垂らし、一定時間保持する方法があります。この利用方法は、CBDが直接体内に吸収されるため、比較的早く効果を感じられるとされています。

鬱症とは何か?

鬱症(うつ病)は深刻な精神疾患であり、その主な症状は、持続的な悲しみや無関心、活動レベルの低下、エネルギーの欠如などです。

これらの症状は通常、日常生活の大部分に影響を及ぼし、個人の仕事や学校生活、家庭生活に悪影響を及ぼす可能性があります。この病気は全世界で数多くの人々に影響を及ぼし、世界保健機関(WHO)によれば、世界中で鬱症に悩む人は2億人以上と推定されています。

鬱症の原因は一つではなく、遺伝的要素、生物学的要素、環境要素、心理社会的要素が絡み合って発症すると考えられています。遺伝的要素とは、親や親族に鬱症の人がいると、自身が鬱症になるリスクが高まるというものです。また、生物学的要素とは、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで起こると考えられています。さらに、ストレスやトラウマなどの環境要素、そして心理社会的要素も鬱症の発症に大きく関与します。

具体例として、環境要素の一つである「職場のストレス」を考えてみましょう。過度の仕事量や人間関係のトラブル、ハラスメントなどが重なると、精神的なストレスが増大します。この状況が長期化すると、心の健康が脅かされ、結果的に鬱症を発症する可能性が高まります。

このように、鬱症は複数の要素が組み合わさって発症し、それぞれの人でその原因や症状が異なることが特徴です。鬱症は単に「元気がない」状態ではなく、深刻な精神疾患であり、適切な理解と対応が必要です。

「CBDを使うと鬱になる」は嘘?

どこから浮かび上がった話しかわかりませんが、「CBDを使うと鬱になる」という噂を聞いたことがあるでしょうか?

結論から申し上げると、これは嘘である可能性が高いと考えられます。むしろ、CBDは鬱にならないための良い効果を持っていると考えられています。

もちろん、CBDに関する科学的な検証は充分ではないため、明確でないことも多々あります。しかし、現状までに行われている臨床実験では、「CBDを使うと鬱になる」とは考えにくいと言えます。

なぜ、このようなことが言えるのか。この根拠を以下で解説していきます。

大麻と鬱病の関係性

大麻と鬱病の関係性について、科学的な実験を具体的に見ていきます。

ここでの大麻とは、あらゆるカンナビノイドを含んでおり、CBDだけでなく、THCも含んでいることに注意が必要です。

大麻の使用で鬱病のリスクは高まらない可能性が高い

スウェーデンで行われた、大麻と鬱病の関係を調べた大規模な実験を紹介します。

45,087人のスウェーデン人男性を対象とし、大麻の使用とうつ病のリスクを比較検証しました。結果として、大麻使用者の間でうつ病のリスクが増加するという証拠は見つかりませんでした。

参考文献:Manrique-Garcia et al. Cannabis use and depression: a longitudinal study of a national cohort of Swedish conscripts. BMC Psychiatry 2012, http://www.biomedcentral.com/1471-244X/12/112

この結果と相反する研究結果を提唱している実験も存在します。それは、うつ病の原因は様々であるため、どうしても社会や家族、個人のライフスタイルの要因の影響を排除することはできないからです。したがって、どの研究においても今後のさらなる研究が必要であることが示唆されています。

しかし、このスウェーデンの実験は圧倒的な数の多さで検証している分、統計的な信憑性は高いと言えるでしょう。

大麻が鬱病の治療に有効な可能性

大麻は、脳内のエンドカンナビノイドシステム(ECS)と相互作用することにより、うつ病への治療として有効な可能性があります。

2014年に公開された学術論文では、大麻が、既存の抗うつ薬が持つエンドカンナビノイドのバランスを変化させる効果と同じ作用を持つ可能性を示唆しており、つまり、大麻による治療が有効である可能性を示しました。

しかしながら、大麻を使用した研究の大部分は、動物実験を通して行われており、その結果も一貫性を欠くものがあります。そして最も重要なことは、これらの研究成果が人間の状況にどれほど適用可能なのかについては、まだ明確ではありません。

参考文献:Matsunaga M, Isowa T, Yamakawa K, Fukuyama S, Shinoda J, et al. (2014) Genetic Variations in the Human Cannabinoid Receptor Gene Are Associated with Happiness. PLoS ONE 9(4): e93771. doi:10.1371/journal.pone.0093771,https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0093771

CBDが鬱症に与える影響

上記までで、大麻が鬱症の予防に有効である可能性があることはわかりました。しかし、大麻にはCBDだけでなく、基本的に違法とされるTHCも含んでいます。

ある研究では、THCにおいて鬱症への予防効果を確かめたという報告もあります。

それではCBDにおいてはどうなのでしょうか。

2018年に行われた研究では、CBDを摂取したマウスがうつ病の症状の改善を示したと報告されています。CBDがセロトニン受容体に作用することで、うつ病の症状を軽減する可能性が示されています。

参考文献:de Mello Schier, A.R., et al. “Antidepressant-Like and Anxiolytic-Like Effects of Cannabidiol: A Chemical Compound of Cannabis Sativa.” CNS & Neurological Disorders – Drug Targets, vol. 13, no. 6, 2014, pp. 953–960. URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24923339/

しかし、ここにおいても、マウスに対する効果が人間にも発揮される可能性はあるものの、それはまだ証明されていません。

CBDの効果によるポジティブな思考

ここでは、科学的な実験ではなく、CBDの一般的に認識されている効果による鬱病への有効性を考えます。

CBDはストレスや不安、炎症、痛みなどの様々な症状の緩和に役立ち、リラクゼーションを促進することで知られています。その効果が直接的でも間接的でも、使用者の思考をポジティブに向かせる可能性があり、それが鬱病対策になると考えられます。

具体的な例として、CBDを定期的に摂取している一部の人々は、ストレスに対する抵抗力が高まり、全体的な生活の質が向上することがあります。一部の研究では、CBDを摂取した人々が、一般的な不安症状の改善を体験したと報告されています。

鬱病の原因も様々であるため、これも断定することはできませんが、CBDの効果は鬱病対策に大いに役立つと考えられます。

まとめ:CBDは鬱を改善する可能性の方が高そう

CBDは、大麻草の一成分であり、鬱病の改善する抗うつ効果は動物モデルを用いた研究を通じて証明されつつあります。また、一部のうつ病患者からは、CBD製品の利用が日常生活のストレス管理を助け、物事をより肯定的な視点で見ることを可能にするとの声が報告されています。

しかし、重要なことは、これらの調査結果がまだ初期段階であること、そしてこれらの効果が全ての人に当てはまるわけではないことを理解することです。

全体として、CBDが鬱病改善に役立つ可能性は高いとされていますが、その使用は適切な知識に基づくべきです。健康な生活を送るためには、情報を正しく理解し、最善の選択をすることが不可欠です。

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